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ある夜に

今すごく悔しい気持ちでいっぱいだ。

何が悔しいって、自分の表現したい音を表現できなかったからだ。

別に繋ぎをミスりまくっていた訳じゃない。

全然良かったと言ってくれる人も多かった。

ただ、自分の思い描いていた空間を作れなかった。

 

それはなぜか?

一言で言うなら僕の実力不足でしかない。

それだと、身も蓋もないので少し言い訳をさせてほしい。

 

僕は最近ヴァイナルオンリーにこだわってテクノをプレイしているのだが、

ヴァイナルDJはピッチ合わせを音だけで行うので、DJブースのモニター環境に影響されてしまう。

今回はモニタースピーカーの下に、さらにモニターサブウーファーもあり、そのサブウーファーが強力で、ものすごい重低音に包まれていたDJブースモニター環境であった。

ブースモニターの音量を下げると、中高音も聞こえなくなってしまう。

おそらく、フロアに近い音(重低音も含めて)という感じのセッティングだったと思うのだが、僕にとっては重低音ばかりブンブン鳴ってて、必要な音が正確にモニタリングできなかった。

 

CDJなどのデジタルDJは、正確なモニタリングよりもフロアに近い音で気持ちよくプレイ出来た方が良いと思うのだろう。

CDJやパソコンの画面上にBPMが表記されてるので、ピッチ合わせも一瞬だ。

しかし、ヴァイナルDJは正確なモニタリングが出来なければ、ピッチ合わせに時間がかかってしまうし、音が取れないから焦ってしまい余裕のあるプレイができない。

今回、僕が自身のプレイに満足していないのは、こういう原因があったのだ。

 

ただ、最初に実力不足と言ったのは、そういう正確なモニタリングが出来ない環境のために、DJミキサーには様々な機能が付いていて、中でもスプリットCUEという、左右別々にマスターとモニター音を分けて出力できる機能を使い、ヘッドフォンの中の音だけでピッチ合わせすれば良かったのである。

または、途中でCDJでのプレイに切り替えても良かったかもしれない。

そういう的確な状況判断や、あらゆる環境への適応力のなさは、僕自身の実力不足としか言いようがないと思っている。

 

僕はDJで手抜きをすることは一切無く、思い描く音の空間を構築出来るように毎回最高なプレイをしようと常に心掛けている。

DJというのは一期一会だと思っているし、たまたま初めて僕のプレイを聴いてくれた人が、その時の僕のプレイをイマイチだと思ってしまうと、もう二度と聴きにきてくれないのではないかと思っている。

飲食店も同じで、例えばたまたま入ってみたラーメン屋の味がイマイチだなーと感じてしまったら、リピートしないのと同じだろう。

 

それだけ、毎回真剣勝負で挑んでるだけに、とても悔しい。

僕の創り出す世界感の好き嫌いはもちろんあるし、感受性は人によって多種多様というのも理解しているが、ひとまず自分自身が納得できるプレイをすることが一番大事だ。

 

DJというのは、人様の曲をただ単に繋げているだけじゃ無く、どこからどこまで音を重ねるか、音の周波数帯のどこにフォーカスを合わせていくか、曲の組み合わせによる変化や、全体の選曲の流れ、などなど沢山の自己表現できる要素が詰まっている。

今回はピッチ合わせに時間がかかってしまい思うようなプレイはできなかったが、今回の件でよりDJとして成長できると確信している。

ヴァイナルDJだからこその緊張感や張りつめた空気感など、僕自身もプレイしていてストイックになれるので、今後とも精進していきたい。